映画『ダイハード』のハンスの落下の解剖学!?リアルを追求する舞台裏の魅力

クリスマスの季節になると、映画『ダイ・ハード』を思い出すのは私だけでしょうか?
映画『ダイ・ハード』のエンディング曲で流れる「Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!」は、子どもの頃から印象的に記憶にずっと刻まれています。
映画に圧倒され、楽しんだあとの、あの謎のクリスマス感。
個人的に好きな『ダイ・ハード』は、1、2です。
主演のブルース・ウィリスを一気にスターに推しあげ、あれほど強烈に印象に残した映画はなかなかありません。
文句を言いながら、普通に大怪我を負いながら痛みに耐えながら、はつらつと戦うマクレーン刑事の活躍。
惜しまれながらも、2022年に現役を引退したブルース・ウィリス。
今も語り継がれるこの映画『ダイ・ハード』が、なぜ今も人々に愛されるのか。
ブルース・ウィリスの魅力もさることながら、その理由のひとつに悪役の存在があります。
『ダイ・ハード』のクライマックスである、ハンス・グルーバー(アラン・リックマン)のビルからの落下シーン。
このシーンが多くの映画ファンに印象を残し続けている理由は、そのリアルな演出にあります。
そして、2024年このシーンが再び話題になっていますので、そのことも合わせていかに強烈なシーンなのかを、アクティングコーチの側からの視点も含め、迫ってみたいと思います。
読み終わったらきっと、また『ダイ・ハード』が見たくなる!
そして、映画がもっともっと好きになる。
そしてそして、俳優や舞台裏がもっともっと好きなる。
そんな素敵な橋渡しができれば幸いです。
参照:クリスマスはやっぱり…!?『ダイ・ハード』シリーズが3週連続放送!
Contents
『ダイ・ハード』のハンスは実際の落下ではなく巧妙な演出!リアル感を追求した撮影方法とは?

実際の落下ではなく演出。
当然と言えば同然ですよね。
スタントマンであれば、実際に落下する方法をとったりしますが、
俳優が本当に高さから落下することは安全上の問題から基本的にはできません。
そのため、映画制作チームは映像の編集技術を駆使し、リアルな落下感を演出しました。
このシーンでは、アラン・リックマンの演技と特別なワイヤー技術を用い、カメラアングルと編集を駆使して落下をリアルに見せているのです。
彼がフォークリフトで吊るされ、地面にエアバッグを配置して安全確保したうえで、リアルな落下感を演出。
また背景はブルースクリーンで合成されています。
アラン・リックマンが落ちざまに見せた、あの動きと合わせて視覚的なリアル感を追求しているのです。

現在から見ると、背景との合成技術はまだまだの段階でしたが、当時はそのカメラアングルに映画館で「ひゃ〜!」となったこと間違いなし!
実際私は子どもの頃にビデオで観ましたが、「ひゃ〜」でした。
伝説:ハンス・グルーバー(アラン・リックマン)はスタントなしで撮影!

こちらの実際に高さ40フィート(約12m)から落ちているんです!
高さ12mってどのくらいの高さか想像できますか?
4階建ての高さです。
12mって4階建て!
直下を見下ろすと、とてもじゃないですが怖くて私は無理です。
意外とプールの飛び降り台で1番高いのが10m!
きっとオリンピック競技などで見ていると思いますので、あの高さ、想像に難くないですよね。
その高さをスタントなしで撮影することをOKとした、アラン・リックマンの心意気。
まずはそこが凄いことだと思います。
みなさん、プロだといっても危険なものはスタントマンに任せるが当たり前な世界なんです。
スター俳優だったらきっと労働組合の関係でNGだったかもしれません。

余談ですが、強盗団で挑発のカール(アレクサンダー・ゴドノフ)との乱闘シーンは、ブルース・ウィルスはスタントを使用しています。
よく見れば転げるシーンは生え際は似ていますが、本人ではありません。
伝説:ヤン・デ・ボン撮影監督やチームとの信頼関係!

このヤン・デ・ボン監督が、撮影監督にいたからこそ名シーンが生まれたのかもしれません。
リアリティを追求する絵「映像」を撮りたい野心というか勢いが、そうさせた可能性があります。

撮影監督のヤン・デ・ボンといえば、みなさんご存知ですか?
大ヒット映画『スピード』の監督です。
超高層ビルから落下するハンス・グルーバー(アラン・リックマン)。
もちろん、俳優とスタッフの信頼関係がなければ成り立ちません。
ドッキリでやった、といったことで大きな話題となっていますが、安全を確認することはしっかりと何度もやっているはず。
フォークリフトで吊るされた感覚の体験、糸は切れることはないというこ。
実際にエアバッグに落ちて安全であるとハンス・グルーバー(アラン・リックマン)が体験していた時間があってこそ。
「安全ですよ」ということがスタッフと俳優の大前提の確認作業。
それをクリアした上での、撮影監督や他スタッフとの挑戦。
きっと野心もあったと思います、撮りたかったはず、これまでにない映像を。
落ちてゆく人をアップで捉えるのはこれまでにない映像表現!
「これは前代未聞の素晴らしいシーンになるぞ」と、そんな話をしたかどうかは不明ですが、それくらいの信頼関係があったからこそできる技としか言いようがありません。
伝説:「3、2、1、ゴー」と思わされた落下の科学

「僕がリックマンにゴーサインを出した。”3、2、1、ゴー”とね。スタント担当スタッフには”リックマンを1のタイミングで落とせ”って言ったんだ」と、スタントコーディネーターのチャーリー・ピサーニは振り返る。
引用元:https://www.harpersbazaar.com/jp/culture/tv-movie/a35063251/die-hard-ending-hans-gruber-death-alan-rickman-201224-lift1/
特殊効果のサイン・モリスは「それで、僕が1を合図にロープを離した」と加える。「彼のあの恐怖の表情はリアルだよ」
モリスによると、リックマンは「機嫌は悪かったけど、怪我はナシ」ということで、本当にびっくりしなければあれと同じ表情は出せなかっただろうから、トリックを仕掛けた甲斐があったのは間違いないと語っていた。
「3、2、2、ゴー」で手を離す約束をして、実際には「3、2、1」で離す荒技。
この驚きの表情たるや、映画史に残る悪役の末路でもあり、素晴らしい目の表情!
なのです。
何が凄いのかって、『ダイ・ハード』以前の落下のシーンは、落ちたと同時、カメラから俳優が消え、次の瞬間には引き(遠方から)の映像に変わって人形なりスタントマンが落ちていくシーンが基本だったということなんです。
それを俳優をアップにすることで、新しい次元で捉えた撮影だったのです。
やっぱり凄いですね。
当時の才能が集まった映画なんですね。
Netflixドラマ『地面師たち』でオマージュされた名シーン

Netflixドラマ『地面師たち』で、このシーンを豊川悦司扮する地面師ボス・ハリソン山中が、リリー・フランキー扮する刑事を追い詰める時にこの『ダイ・ハード』のシーンを引用したのは記憶に新しい。
そう、「3、2、2、ゴー」で手を離す約束をして、実際には「3、2、1」で離す。
こちらのドラマでは、正義が落ちていきますが・・・。
だから怖いですよね。
このドラマの魅力のひとつを挙げるなら、民放ドラマでは死なない著名俳優が、海外資本のドラマでは死ねるという意外性。
このドラマはそこも凄い。
参考記事:今見るべき日本のドラマ4選!俳優の演技と作品性が変化した世界配信の日本ドラマ!
ハンスの落下から見る現在のリアリティの追求と俳優の関係

俳優は、演技でもリアリズムの演技で対応していくのが世界スタンダードです。
だれもわざとらしい大げさな演技を求めていません。
ですので、演技はメソッドアクティングだったり、リアリズムを追求すべく生まれた演技法を世界各国が採用して俳優が日々演技トレーニングを積んでいます。
その中でもアクションのリアリティというかスタントなしを全力で取り組んでいるのがトム・クルーズです。
『ミッション・インポッシブル』シリーズの高所からのスタント、そして『トップガン・マーベリック』の飛行機の資格取得したうえで、実際に操縦しての撮影など。
通常、この危険なスタントはハリウッドスターは絶対にしません。
プロデューサーが絶対に禁じます。
『ミッション・インポッシブル』『トップガン・マーベリック』は、実は裏技で成り立っているのです。
トム・クルーズが俳優だけでなく、プロデューサーも兼ねているため、制作サイドの判断としてもトム・クルーズ自身がOKを出すことで成立した離れ業なのです。
もはやアクション俳優となってしまった感のあるトム・クルーズですが、それでも体を全力で鼓舞する姿は映画の見どころのひとつとなっています。
日本では時代劇の殺陣シーンなど、技を取得してからの撮影が基本ですよね。

ちなみに、こちらの「Netflixで観れる芯の強い女性が主役の映画!心境に合わせてオススメ5作品!」の記事も参考にしてください。
ここでご紹介した、「FALL フォール」も高い位置に鉄塔セットを作って、高さの恐怖をリアルに体感しながら俳優が生きています!
同じですね、こだわりが。
関連記事:「Netflixで観れる芯の強い女性が主役の映画!心境に合わせてオススメ5作品!」
映画『ダイハード』のハンスの落下の解剖学!?-まとめ-

映画『ダイハード』のハンスの落下の解剖学、ということでお贈りしました。
『ダイハード』以前と『ダイハード』以降と、この落下における撮影の仕方は大きな変容を辿ったといっても過言ではありません。
『ダイハード』の第一作目の強烈さが伝わりましたでしょうか。
まとめポイント
・本当に落としたと思われがちですが、巧妙な演出です。
・ハンス・グルーバー(アラン・リックマン)はスタントなしで撮影!
・ヤン・デ・ボン撮影監督やチームとの信頼関係!
・リアリティの追求!
・26年の時代を越えて日本ドラマでもオマージュ
『ダイハード』の映画については、私も語りたいことがたくさんあり過ぎて困ってしまいます。
文量も多くなりがちですので、他のお話はまた違う機会に。
映画って、ほんとに素晴らしい発見をさせてくれますよね!
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